ミラノを代表する観光スポットのひとつ「ブレラ絵画館(美術館)」は、ミラノ最大の国立美術館です。
展示されている絵画作品は、15~18世紀のヴェネツィア派とロンバルディア派といった北イタリアの絵画芸術が充実しています。
ラファエロなどのルネッサンス期を代表する芸術家の作品をはじめ、イタリアを代表する芸術家のカラヴァッジオ、ピカソやモディリアーニなどの作品を鑑賞することができます。
ブレラ絵画館の基本情報や見どころ作品まで詳しく載せているので、ミラノを訪れた際には是非行ってみてください。
*ブレラ絵画館を「ブレラ美術館」と書かれているものもありますが、ここではブレラ絵画館で統一します。
ブレラ絵画館(Pinacoteca di Brera) (ピナコテカ・ディ・ブレラ)について
建物は元々は17世紀に創設されたイエズス会の教育施設で、ロンバルディアを統治していたハプスブルク家の女帝マリア・テレジアがイエズス会を解体し、1776年に美術学校が創設されました。
マリア・テレジアは、美術学校の学生に名作を間近に見る機会を提供したいと、教育を目的とした絵画の収集が始まりました。
当時のロンバルディア地方はフランスの支配下になっており、1861年にイタリアは統一されます。
19世紀初めのナポレオン統治時代の文化政策により、フランス軍が支配した各地の教会や修道院(ミラノや北イタリア)から押収した絵画作品が数多く集められ、コレクションが増大します。
そして、ナポレオンの40歳の誕生日を記念して1809年8月15日より一般公開されました。
コレクションを充実させたブレラ絵画館は、1882年に国立美術館となり現在に至ります。
マリア・テレジアが創設した美術学校は現在もブレラ絵画館の1階にあり、建物の中には1764年に開設されたブレラ天文台(Osservatorio astronomico di Brera)、1774年に開設されたブレラ植物園(Orto Botanico di Brera)もあります。
基本情報
ブレラ絵画館(Pinacoteca di Brera) | |
住所 | Via Brera,28 20121 Milan |
電話番号 | +39 02 7226 3230 |
料金 | 15ユーロ(一般) |
営業時間 | 火〜日: 9:30〜18:30(最終入場時間17:30まで) 毎月第3木曜日、ピナコテカは22:15まで営業(最終入場は21:30まで) 休館日: 毎月曜日・1月1日・5月1日・12月25日 |
HP | https://pinacotecabrera.org |
詳細は公式ホームページよりご確認下さい!
アクセス方法
徒歩
ブレラ美術館は、ミラノのドゥオモ広場(Piazza Duomo)にある観光スポットのドゥオモ(Duomo di Milano)やガッレリア・ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ(Galleria Vittorio EmanueleⅡ)、スフォルツェスコ城(Castello Sforzesco)などの最寄り駅から近く、徒歩6分程度で行くことができます。
また、ドゥオモ広場(Piazza Duomo)からは徒歩12分〜16分で行くことができます。
ドゥオモ(Duomo di Milano)からアーケードを抜けて、オペラの殿堂スカラ座に向かって右の道を5分ぐらい歩くと、どっしりしたブレラ宮が右手に見えてきます。
絵画館だけでなく1階は国立美術学校となっており、アーティストを目指す若者たちでにぎやかです。
周辺には画材店や絵などのギャラリーも多く、とても雰囲気のある地域になっているので徒歩で向かうことをおすすめします。
メトロ
ブレラ美術館の最寄り駅の一つが、ドゥオモ広場にある地下鉄ドゥオモ駅(Duomo)で、路線はМ1とМ3が走行しています。
ブレラ美術館の最寄り駅は3ヶ所あり、6-8分程度と大きな差はないので行動に合わせて降車駅を決めましょう。
- 地下鉄2号線のLanza (ランツァ)駅から歩いて6分
- 地下鉄3号線のMontenapoleone (モンテナポレオーネ)駅から歩いて7分
- Castello Sforzesco (スフォルツェスコ城)から歩いて8分
バス
最寄りのバス停はvia Monte di Pietà(モンテディピエタ)またはvia Pontaccio (ポンタッチョ)でどちらもルート61です。
また、ルート57のForobuonaparteもあります。
イタリアのバスは、次の停留所について車内アナウンスや車内表示が日本のバスのように充実していないので、乗り慣れていない人には難易度が高いです。
また、混み合っている車内ではスリにも注意しなければならないので徒歩が安全でおすすめです。
予約
コロナパンデミックの影響により、完全予約制になっています。
また、入館時にはコロナパス(ワクチン証明書)のチェックがあります。
こちらのブレア絵画館オフィシャルサイトから予約しましょう!
入場料金
チケット料金は、2021年8月時点は15ユーロです。
入場
絵画館の入り口は少し分かりにくいですが、ブレラ通り沿いにあります。
入り口はレンガ色の建物中央よりやや左側にある門から入ります。
門を通過するとイタリアの彫刻家アントニオ・カノーヴァの「ナポレオン像」が中央に置かれている中庭があり、この中庭を囲むようにして2階建て建物があります。
1階は美術学校で、建物2階が美術館になっているのでナポレオン像の後ろにある階段を上がり館内に入りましょう。
通常であれば、この時にチケットを購入します。
チケット売り場(Biglietteria)は、入り口(Entrata)の左側にあります。
館内の様子
館内は広々としていて落ち着ける空間になっています。
所々にベンチがあるのでお気に入りの作品の前に座ってじっくり観察してみましょう。
順路の途中では、絵画の修復作業を見ることができ、精密機械が修復している様子はなかなか見ることができない面白い経験でした。
*撮影不可
こちらは私が印象に残った作品の一部です。
天使が描かれているものが好きみたいです。笑
後ほど、ブレラ絵画館にある数々の名作についても紹介していきます。
少しでも知識を入れていくと、実物をみた時の感動や観る視点が全然違うので事前学習をおすすめします。
館内マップ
館内は、中庭を中心に一周するような創りになっています。
番号ごとに部屋が分かれているので観たい作品がどこにあるか把握しておきましょう。
見どころ作品の紹介
ブレラ絵画館にある有名な作品たちのエピソードや解説、鑑賞ポイントなどを紹介していきます。
「死せるキリスト」(Cristo morto)アンドレア・マンテーニャ
1470~74年頃 1480年頃 第6室
15世紀後半にパトヴァで活躍したマンティーニャの最も有名な代表作です。
この『死せるキリスト』はキリストの遺体が斬新な角度から描かれており、ブレア美術館の中でも有名な必見作品の一つではないでしょうか。
マンテーニャは、パドヴァ近郊出身のマントヴァ候ゴンザーカ家の宮廷画家です。
彼はこの作品を生涯手放しませんでしたが死後に息子が発見し、その後ルイ14世の手に渡り19世紀になってイタリアに戻ってきました。
処刑後、十字架から降ろされたキリストが両足の裏を正面に向けて横たわる姿を短縮法(遠近法を用いた描写の一種)という技法で描写されています。
当時はまだ遠近法が確立されていなかったため、画期的な方法だと高く評価されました。
頭を大きく描くことでキリストの苦悩を鮮明に浮かび上がらせ、キリストの手足に残る生々しい釘の跡や変色した皮膚の色は迫力とリアリティ溢れる作品です。
横たわるキリストの左側には、息子を失い苦悩と悲しみに満ちる年老いた聖母マリアと祈るように両手を組み合わせ悲しむ聖ヨハネが描かれています。
また、若く美しく描かれるのが普通だった聖母マリアを老婆の姿で描いていることも特徴です。
「ピエタ」ジョヴァンニ・ベリーニ
第6室
15世紀後半に活躍したヴェネツェア派の巨匠ジョバンニ・ベリーニの初期の最高傑作として有名な作品です。
ベリーニの姉がマンテーニャ(『死せるキリスト』を描いた人)と結婚したため2人は義兄弟です。
キリストや聖母の表情、悲劇性に満ちた表現はマンテーニャの影響を強く受けています。
磔刑に処され亡くなったキリストを聖母マリアと聖ヨハネが抱きかかえている姿が描かれています。
半裸のキリストの頭には茨の冠、両手には十字架に打ち付けられた釘の跡、右の脇腹には死を確認するために兵士が刺した槍の跡、顔は頬がげっそりとやつれ目がくぼんでいてとてもリアリティがあります。
キリストに顔を寄せる聖母マリアは、息子の釘の跡が残る痛々しい手を取り、悲痛な表情で見つめている必見作品です。
「聖母の婚礼」ラファエロ・サンツィオ
第24室
ルネッサンス巨匠ラファエロが21歳の時、権力者アルビッツィーニ家の依頼により、ペルージャ近郊チッタ・ディ・カステッロのサン・フランチェスコ聖堂サン・ジュゼッペ礼拝堂に置く祭壇画として制作した初期の傑作です。
この作品は、聖母マリアが14歳の時にヨセフと結婚の儀式を行なう場面が描かれています。
福音書によると、聖母マリアの結婚は神によるもので、神殿の司祭長のもとへ天使が訪れ、「国中の独身者に一本の杖を持たせて集めよ。そして杖の先に花の咲いた者を聖母マリアの夫として選べ」と神のお告げを伝えました。
大工のヨセフが手にする杖の先から花が咲き、これによりヨセフは聖母マリアの夫として選定されました。
右側の男性たちは、神による選定で選ばれなかった独身者が失望して杖を折る様子が描かれています。
また背景のエルサレムの神殿の描写や空間構成においても、21歳の若きラフェエッロが師匠のペルジーノを超える力量を有していたと評価されている素晴らしい作品です。
「エジプト・アレッサンドリア広場で説教する聖マルコ」ベリーニ兄弟
兄ジェンティーレ・弟ジョバンニ 第8室
ヴェネツィアに大きな工房を構え、父ヤコボの代からヴェネツィア派の中心だったベリーニ家。
ヴェネツィアのサン・マルコ信徒会館のホールを飾るために制作依頼を受けた作品です。
兄ジェンティーレが76歳の時に制作を開始しましたが2年後に他界したため、弟のジョバンニが兄の遺言によりこの作品を引き継いで完成させました。
アレクサンドリアの聖エウフェミア聖堂をイメージして描かれましたが、実際のモデルはヴェネツィアのサン・マルコ寺院(Saint Maek’s Basilica)だそうです。
寺院前のキリンや説教を聞く人々の服装がイスラムの文化を感じさせる作品になっています。
「エマオの晩餐」ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
第28室
復活の日に、エルサレムから11km離れたエマオを旅していたキリストの弟子2人の前に男が現れ、弟子達はその男がキリストだと気づかないまま食事に招待しました。
男が食事の招待に感謝し、パンを分ける姿を見て(聖餐式の暗示)弟子達はキリストだと気づき驚きましたが、その時すでにキリストの姿はなかった、という福音書の一場面が描かれています。
当時から傑作と言われていた作品で、模写は20点以上も確認されています。
カラヴァッジョの「エマオの晩餐」は、同一タイトルで2作品描かれています。
ブレラ美術館に展示されているこの作品は、カラヴァッジョが1606年にローマでラヌッチョ・トマッソーニを殺害してしまい、逃避行している年に描かれたものです。
光と影が大胆に表現された、実写的で厳格さを感じる画風になっています。
また、2010年の行われたX線写真の調査で、本作品の左側には窓もしくは回廊、自然光に照らされた樹木の情景があり、キリストの顔はもっと若く描かれていましたが、完成直前に芸術的意図に基づき変更が加えられたということが発見されました。
これはカラヴァッジョの人生を反映しているといわれています。
ちなみにもう1つの作品はロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されています。
全く異なる画風みたいなのでいつか見比べてみたいですね!
「接吻」フランチェスコ・アイエツ
1859年 第38室
ヴェネツィア出身のフランチェスコ・アイエツは19世紀のイタリアロマン主義の画家です。
ロマンチックな男女の接吻が情熱的に、ストレートに描彼ており、イタリアロマン主義の象徴的作品とされています。
この作品はミラノ貴族のアルフォンソ・ヴィスコンティ・デ・サリシュート伯爵の依頼により制作されました。
ブレラ美術アカデミーの校長もしていたフランチェス・アイエツの作品は、『接吻』のある第37室と第38室に数多く展示されています。
アイエツの高い写実性と鋭い観察力で描かれたこの絵は、1856年にブレラ美術館で最初に展示された時はとても話題になったそうです。
イタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督は、映画「夏の嵐」で、この絵の男女のポーズをモデルにしてラブシーンを決めたと言われてます。
個人的にはブレラ絵画館の中で最も印象に残った好きな作品です。
まとめ
ブレラ絵画館は、有数の名作がある北イタリアのルーブル美術館のようで、ミラノを訪れた際には絶対に行くべき観光スポットです。
ミラノのおすすめ観光スポットはまだまだたくさんあるのでこれからどんどん紹介していきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、Have a nice trip!!